わたしたちは「共育て共育ち」の理念のもと、子どもをまん中に職員と父母が手をつなぎ合い、支えあい、成長しあい、共に学べることを大切にしながら日々歩んでいます。
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はとを知る-「共育て共育ち」の理念と実践

瀬沼理事長からのご挨拶

瀬沼幹太写真

毎年度4月、私たちは汐見稔幸先生から講話をいただく幸せに出会ってきました。
「子どもを真ん中に父母と共感し合うこと、手をつなぎ合うことには深さがあること」 「先生たちが保育を語りたくてたまらない職員集団をつくること」 「(法人理念である)「共育て共育ち」の在り方は4園4通りでいいんです」 先生からのメッセージは毎年度内容の違いこそあれ、その根底には上記3つが色濃く込められていました。少なくとも僕はそう受けとめてきました。汐見先生からいただく幸せ、それを自園でどのように形にしていけるのだろうか、と。
平成28年冬。汐見先生からご紹介された幼児教育研究家の木村歩美さん、一級建築士の井上寿さんのPCのモニターに映し出された子どもの姿、環境の豊かさに圧倒されました。ぐいぐい引き込まれていきました。「この園庭環境を作ったのは保育士やお父さんお母さんです」とのお話しに、コレだ!と思いました。汐見先生のおっしゃることを形に出来る!と思いました。何より、鳩の森愛の詩の子どもたちにこんな原風景を創りたいと強く思ったのです。 平成28年2月29日。次期父母の会会長の石田お父さんと法人職員数名とともに、山形県の三瀬保育園を訪れました。三瀬保育園の保育環境、保護者説明会での木村歩美さんと井上寿さんのお話、本間日出子園長先生との夜、・・・この日にいただいた宝物の数々は僕の保育者人生における新たな原風景になりました。

そして自園にて木村さん井上さんとの座学を重ねた後の28年5月。園庭整備が始まりました。真っ平だった園庭に200立米を超す山砂を入れました。2mを超す築山、8mの瀬谷タワー、三段砂場、ステージ等々、その全てをお父さんお母さん方と職員が力を合わせてつくりました。
「明日からウチの子どもも遊ぶんですよね」と言いながらやすりを丁寧にかけるお父さん。
「うわーよくすべる!(すべり台)楽しいですね!」と、出来上がった遊具で早速遊びだすお父さん。
「安全点検合格です!」と、遊具をゆすって飛び跳ねてされた後、高らかに宣言されるお父さん。
「先生たちはこの歩みをとめないでください。お父さんお母さんご家族に向けては私たちが説明をしますから」と、私たちを安心で包んでくださるお父さん。
参加してくださったどの方も「俺(わたし)がつくった園庭だ」と胸を張っておっしゃいます。協同する時間を重ねていくたびに、保護者と職員、保護者と保護者の距離が近いだけでなく、関係により深みが出来ていることを実感しています。

そして何より、保育士も事務局員も常勤も非常勤も関係なく、子どもの姿を語りたくてたまらない職員集団が生まれています。
園庭には、子どもの無限のイメージを受け止められる砂場や泥場や屋台などの「応答性」ある遊具や、0才児クラス~5才児クラスまで6クラスの子どもたちが一斉に園庭にでると、2m以上ある瀬谷タワーや小タワーから高さ24センチの初級の一本橋や日向ぼっこしながら絵本を読めるウッドデッキコーナーまで、子どもたち一人ひとりの思う存分遊び込める「多様性」ある遊具が、いつでも子どもたちを待っています。また、園庭には「禁止」や「制約」がありません。挑戦することも挑戦しないことも、保障しています。見守る私たちの眼差しそのものが「監視」ではなく「共感」であることを大切にしたいと心に留めています。
平成28年7月。新しい環境が生まれると、子どもたちが劇的に変化していきました。子どもたちは自分で考え、自分で選び、自分で行動する・・・大人でも難しいことを日々実践するようになっていきました。年長児だけでなく乳児クラスの子どもたちも、です。子どもの日々の育ちの本質は決して他者との比較ではなく、内なる自分と向き合うことなのだ、と子どもたちがいのちを輝かせながら教えてくれます。その変化に気づいた職員がその変化に応えようと環境を含めた保育全般を見直していきました。より豊かな環境を子どもたちに届けたいと職員同士で話し合い、お父さんお母さんに相談し、園庭整備を重ねていきました。その度に、子どもたちの楽しい!が職員の楽しい!をつくっている、幾重にも広がっている、と実感しています。
すると、職員同士のつながりが深まり、園全体で保育をつくっていこうとする職員の意識がそこかしこで生まれていることに気づきました。職員同士でものの数分「あーだこーだ」と相談した後に、あっという間に本棚がつくられたり、新しい机が置かれたり、玩具が気持ちよく収まる収納箱が用意されます。それを担当クラスではない職員同士で作業していることも当たり前の光景になっています。
園庭のことに限らず職員会議も、うたづくりも、一人ひとりの声がよく聞こえ、笑い声が絶えません。自分たちが語れば語るほど、目の前にいる子どもたちの未来が豊かになっていることを実感しているからでしょう。

子どものいのち輝く保育園は大人のいのち輝く保育園でもある、ことを実感しています。
私たちは終わりなき旅に出たような心持ちでいます。子どもたちの心も身体も頭もフル回転して遊ぶ姿を目の当たりにした今、もう、真っ平の園庭に戻ることはないでしょう。

(園庭整備事業報告 第1期『のびる』より抜粋)
社会福祉法人 はとの会
理事長 瀬沼 幹太

汐見前理事長からのご挨拶

汐見稔幸写真

「鳩の森」の5つの保育園と 2つのキッズクラブの出発は 鳩の森愛の詩保育園です。
この園は 園長の瀬沼静子さんの自宅を開放して立ち上げた 無認可の保育園でしたが、すべてはここからスタートしています。

以来、せぬママをはじめとする先生がたと子ども、保護者は ときどきの喜び、感動、祝いなどを、ときにつらさを、 歌を歌い、楽器を演奏して いっしょに味わい、いっしょに乗り越えて ここまでやってきました。

鳩の森の保育園、キッズクラブは 何事も、子どもたちと相談し、何事も、保護者と相談して いっしょに歩んでいくという道をとってきました。
それを、私たちは共育て共育ちとよんでいます。
この共育て共育ちの保育は、 おかげさまでみなさんに理解され、信頼され、 もう一度鳩の森の保育を体験したいから、もう一人産みたい とおっしゃって下さる保護者の方々もいて みなさんによって支えられてきました。

共育て3画像

鳩の森にはいつも歌や演奏があると申し上げましたが 歌や演奏を愛する人は、人と共鳴することが大好きな人だと思います。
人と共鳴するというのは、心と身体が他者と 深く共感するということに他なりません。
そして、人と共鳴し、共感することが好きな人は、 人と深く交わることを大事だと感じている、 本当の意味で平和を愛する人だと考えています。
「はとの会」は、これからも、
その子らしさ育てを瞳のように大切にし 保護者のみなさんといしょに
平和を、心から希求する子どもたちを育てます。

社会福祉法人 はとの会
前理事長 汐見 稔幸
汐見前理事長プロフィール

東京大学名誉教授・白梅学園大学学長

専門は教育学、教育人間学、育児学。育児学や保育学を総合的な人間学と考えていて、ここに少しでも学問の光を注ぎたいと願っている。また、教育学を出産、育児を含んだ人間形成の学として位置づけたいと思っていて、その体系化を与えられた課題と考えている。三人の子どもの育児にかかわってきて、その体験から父親の育児参加を呼びかけている。

育児・幼児教育関係の著書
「子どもの自尊感と家族」「保育者論」「子どもが育つお母さんの言葉かけ」他

TV出演
「すくすく子育て(NHK Eテレ)」他。

せぬまま(瀬沼 静子)からのご挨拶

せぬまま

 どなたにお会いしても「せぬまさんは、しあわせねえ」と言われます。福の神様が勿体ないほどの出会いを下さったので、両手からこぼれるほどのしあわせをいただいてきました。ほんとうに私はしあわせです。これまで保育園を支えてくださったたくさんのみなさん、子どもたち、お父さんお母さん、ほんとうに有難うございました。

 30年、側で見守ってくださったみなさんは、いつもハラハラドキドキされたことでしょう。情熱の塊だけで前へ前へすすんでいく鳩の森でしたから。 無認可保育園としての苦労、悩みのひとつは、お給料がお給料日に用意できなかったことでした。無認可保育所全体の書類が整わないときは、補助金が遅れたのです。研修会場で鳩の森Tシャツを売ることだって、研修に出かける旅費をつくりたい一心でしたから、大きな声でよびかけることに恥ずかしいと感じたことがありませんでした。いっしょに行ったお父さんお母さんも、宿泊先のお部屋を廻ってTシャツを売り歩いてくださったのです。学びたい!子どもたちの前にしっかり立てる大人、保育者になりたい!そのために学びたい!無認可保育所に研修案内はきませんでしたから、私たちで探して学ぼう! お父さんお母さんにお届けした「研修報告書 は、私たちのささやかな感謝の気持ちでした。

せぬまま2

「卒園する子どもたちひとりひとりに贈るうた」は、さまざまな困難を伴うようになりました。職員の話し合いが不十分のまま父母の会に伝えてしまいましたので、昨年度はお互いに不信感がうずまくような苦しい月日を重ねました。3園それぞれの歩みは異なりますが、「はと」(鳩の森愛の詩保育園)は、今年度のはじめ、「困難なときほど、うたって乗り越えてきた私たち」が、「子どもたちの成長をうたにする」活動をつづけていくことを決めました。かつてないほどの話し合いの中で、気づいたことはすべてをばねに、27年度は「おたより」の改革、「行事」の見直し、「園内研修計画」の再検討に入っています。 この間、お父さんお母さんたちがさまざまな場で、「父母としての育ち合い」をふりかえられているという報告は、私たち自身が、「子どもたちが保育園が大好きだと言えるような保育をしているか」を問う大きな岐路にいる時でした。「私たち、やってるじゃん」といっているような奢りの気持ちに覆われている時でした。「共育て共育ち」が冠だけで終わらないように、私たちの保育を見守ってくださっている感謝を忘れずに、一生けんめい歩いていきたいと思います。

汐見先生が理事長に就任されて4年目を迎えます。ひとつひとつすべてをお聞きしたい。 不足だらけの私たちに先生は驚かれたでしょう。でも、この間の学習で、子どもたちに手渡すものが確かになっています。「鳩の森愛の詩憲章」も、平和を愛する子どもたちを育てると誓った私たちの学習の中で生まれたものですが、不安が加速していくような現代です。声に出して唱えていきましょうね。

社会福祉法人はとの会 理事
瀬沼 静子